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株式会社の設立手続き、経営相談

会社の名前を決定する

 会社の名前、名称をのことを「商号」といいます。この商号を考えることが設立の手続きのなかで最も楽しいものかもしれません。株式会社の場合には、「株式会社」という会社の種類も併せて表記します。

 商号を検討する前に、ルールについてご説明いたします。
 まず、先述のように「株式会社」の文字を入れる必要があります。「株式会社○○○」でもいいですし、「○○○株式会社」でもいいです。前者を「前株」、後者を「後株」などと呼んだりします。
 商号に使用できる文字は、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字、一定の符号(&など)のみです。外国語では、ギリシャ文字やキリル文字、ハングル文字などは使用できません。いわゆるAまたはaからZまたはzの文字のみです。また、「○○支店」や「○○支社」など会社の一部を表す文字も使用できません。

 自分で考えた商号が、すでに設立予定の本店所在地で登記されている場合には、その商号で設立登記をすることができません。そのため、法務局で本店所在地の予定地に同一の商号の会社がないか無償で調べることができます。もっとも、同一本店所在地に同じ商号がない限り、登記をすることができますので、会社やお店を借りるところに同じ会社名の会社がすでにあった、または、自宅を本店にする場合に家族が同じ商号の会社をすでに自宅で設立していた、ということは非常に稀でしょうから、ほとんど制限がないものとなっています。

 同一本店所在地に同じ商号の会社がないとしても、不正の目的をもって、他の会社と類似した商号を使用することは許されていません。有名企業と類似したまたは関連会社と誤認されるような商号を使用すると、設立の登記はできたとしても、その有名企業から商号を使用することを停止するよう請求されることがありますし、営業を侵害されたとして損害賠償請求されるおそれもあります。また、有名企業ではなくても、市内にすでにある会社と同じ商号を使用すると、お互いの営業の妨げになりますし、お客様も混同しますので、避けたほうがよいでしょう。

商号の考え方

 商号は会社の顔となるもので、もっとも頻繁に利用されるツールとなるものですから慎重に考えたいものです。一度商号として登記しますと、商号の変更には定款の変更のほか、3万円の登記代がかかります。

 会社の商号はひとつでなければならず、営業の種類ごとに異なる商号を用いることはできません。つまり異なるいくつかの分野の事業を展開する予定であったとしても、飲食店の事業は株式会社A、自転車修理店は株式会社Bなど、ひとつの会社で複数の商号を名乗ることはできません。

 ただし、商号とは別に、会社のブランドや愛称、店舗名を自由に設定することもできますから、会社名とお店の名前を別々に考えてもいいでしょう。たとえば、「旭川観光開発株式会社」という会社が、「喫茶あさひばし」という名前のお店を出すこともできますので、会社名はカタい名前で、お店の名前は親しみやすく、というかたちでもいいでしょう。実際にある北海道の地域航空会社である「北海道国際航空株式会社」は、会社の商号よりも、「AIR DO」や「エアドゥ」といった名称のほうが有名ですね。

 「株式会社」の文字を商号の前にするか後にするか、いわゆる前株か後株かも悩むところでしょう。これについての統計はありませんので弊社の感覚によりますが、昔は後株が多かったですが、近年は前株も多くなってきたように思います。おそらくこれは、カタカナやローマ字表記の会社が増えたからであると推察されます。

 弊社の独自の調査ですが、漢字の文字が多い会社の場合には、「全日本空輸株式会社」のように後株の方が多い傾向があるようです。一方、長いカタカナ表記がある場合には、「株式会社日本航空インターナショナル」のように前株の方が多い傾向があるとみています。ただし、パナソニックやキャノンの関連会社は、「パナソニックセミコンダクターディスクリートデバイス株式会社」や「キャノンマーケティングジャパン株式会社」のようにカナの文字数がどれほど多くてもすべて後株になっています。ソニーの関連会社の場合には、「株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント」「株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズ」のように前株の会社もありますので、語感や語呂と、表記したときの文字のバランスなどを考慮して決めたらいいでしょう。

 登記の際にはフリガナは不要ですが、漢字の表記で「日本」でも、「ニホン」と読ませるか、「ニッポン」と読ませるかの違いがあります。戦時中に「ニッポン」と読ませた方が語感が強く力強さがあることから、「ニッポン」と読ませる企業も多くあります。「全日本空輸」も「ゼンニッポンクウユ」と読みます。

 事業内容を商号に含めるかも難しいところです。事業の目的が明確に決まっており、その事業しか行わないのであれば、「○○○建設株式会社」のように事業の種類がはっきりと分かるような商号を付けてもよいでしょう。一方、他分野にわたって事業を展開する場合には、抽象的な文言のみのほうがよいかもしれません。ただし、何をやっている会社なのか商号だけでは分かりづらいという欠点はあります。

 いずれにしましても、頭の中だけでなく、実際に書いて、声に出して読んでみることによって、いいイメージの商号を作ることができるでしょう。